じつはデジタル入札は以前からある。
組合員用のエクストラネットがあり、
自宅のパソコンからでも、ログインすれば入札することができる。
ただ、やっぱり現物を見て選びたい。当たり前だ。
現場での入札は手書き以外の方法がなかった。
なので、パソコンからの入札は、東京古書会館でプリントアウトし、
きのう紹介した封筒に入れる。
途中デジタルで、最後はアナログに戻るわけだ。
めんどくさい・・・
だから、現行のデジタル入札は、ほとんど利用されてこなかった。
全部デジタルに出来ないだろうか? というのが3/14の実験である。
出品の本が並んでいる。
昨日の画像と比べてスカスカ感があるのは、あくまで実験だから。

出品本の題名や出品者名、画像は、あらかじめ登録されている。
この作業、古書会館で職員さんが入力してもよいが、
できれば、出品者が自宅のパソコンで入力して、エクストラネットにアップしておいてくれるとさらに良い。
封筒の変わりにバーコードがつけてある。

いままで通り自宅のパソコンから入札できる。
そして、現場で入札したい人は・・・

貸出用に準備されたipod touch。
入札専用アプリを開発したのだ。
買いたい金額をペンで書くかわりに、タッチ入力していく。

70歳代、80歳代の現役がゴロゴロいるこの業界、
電子端末への拒絶反応が心配されたが、
その点は予想より良かったようだ。
そして「開札」
リーダーでバーコードを読む。

ipod経由、エクストラネット経由で入札されたデータの中から落札者を選ぶ。
昨日の画像で手作業でやっていた部分だ。
一瞬で終わる。
宅配便屋さんが持っているような出力端末

落札者と金額を書いた紙が出力されて、昨日の画像のように貼り付ける。
現場で、ipodを使って入札する作業は、完全デジタル化のために、
なかば無理矢理考え出したもので、手書き作業より格段に便利になるわけではない。
メリットのひとつは、いままで何時間もかかっていた開札作業が大幅に短縮されることと、間違いが減るだろう事。
でも、ボクの私見だけど、デジタル入札の主眼は、エクストラネットを使って、お店に座ったまま入札できる点にあると思う。
まず思いつくのは、遠い地方で開かれる市場に参加できること。
でも、たぶん、それだけではない。
例えば、東京の人だって、
古書会館まで来て、現物を一通り見てから、あるいは一通り入札してから、
自店に帰って、ゆっくり「改め入札」することもできる。
その逆に、自店で一通り入札しておいてから、現地で、気になるモノだけ入札し直すこともできる。
とにかく、どんな使い方ができるのか、現在の常識では推し量れない。
予想もしなかった使い方をする古本屋さんが出てこないとも限らない。
あるいは、全集本。
古本屋は本に詳しい。
「○○出版の○○全集」と聞けば、いちいち現物を見なくてもわかる。
重い全集をわざわざあっちこっち持ち運ばなくても、
出品者の手元に置いたまま出品し、落札者のところに直接送ればよい。
そんなたぐいの出品を集めれば、将来は、月一回くらい「デジタル市」が開けるかもしれない。
開いてみれば、われわれが予想もしなかった利用方法が生まれてくるかもしれない。
古本・骨董・美術品などの市場は、江戸時代後期にはあったという。
料理屋の座敷などを借り、十人かそこらの業者が、不要な品物を持ち寄り、自分の欲しいものと交換して帰る。
とってもシンプルな市場。
そこに運営者が現れ、常設会場を建設し、どんどん複雑化していったのが今の市場だ。
デジタル交換会をつきつめていくと、形は違えど、売り主と買い主が直接向き合う、江戸時代のシンプルな市場に先祖返りしていくような気がしないでもない。