「子ネコの墓参りでもしようかな」
突然そう思って、いつものウォーキングルートを変更し、欅の木に向かった。
堤防脇の一帯は公有地で、原っぱに樹木が点々と繁っている。
ひっそりと人通りもないので、ネコが捨てられるのだろう、ノラネコの姿をちょくちょく見る。
子ネコを埋めたあたりに立つと、原っぱの真ん中に何か見える。
ネコの死体だ−直感した。
イヤだな。見たくないな−と思いつつ近寄ってみる。
シーンと静まりかえる日曜日の早朝。
歩くと霜柱がサクサクいう。
茶白のネコが2匹。身を寄せ合っている。
一匹はすでに冷たくなり、硬直していた。
もう一匹は死んだ仲間を暖めようとでもするかのように覆いかぶさっていた。
触っても逃げる力もないようだった。
抱き上げると「はなせー」とでもいうように弱々しく鳴いた。
どうしよう。
とりあえず帰宅してシャベルとネコのエサを持つ。
死んだネコを、あの欅の下に埋め、ぐったりしたネコの前にはエサを置いてみる。
食べようともしない。
食べて元気だすんだよ。じゃあね。
帰りかけて思い直した。やっぱり連れて帰ろう!
これがその日のカンクロウの姿。
写真ではわかりにくいけれど痩せて背骨がゴツゴツと浮きだし、毛並みはパサパサだった。
エサを置いても食べようとしない。
年末で動物病院は休みに入っている。
冷たいかもしれないが、もしこのまま死ぬなら、それは運命だ。
あんな寒い原っぱで死ぬよりずっといい。
休み明けまで持ちこたえたら病院に連れて行こう。
そう決めた。
寝床をつくってカイロを入れた。
3日間なにも食べなかったが、4日目に自分から寝床を出てエサを食べた。
一緒にいたネコは、毛色が似ていたから兄弟ではないだろうか。
死因はわからない。あの時は、栄養不足で衰弱し、冷え込みで凍死したのではないかと思ったが、あとから考えれば、ネコなら衰弱した段階で物陰に隠れるはずだ。
あんな目立つところにいるのはおかしい。
ノラねこを嫌って虐待する卑怯な人間もいる。毒でも盛られたのではないか−そんな疑念も湧いてくる。
でも、あの時は気が動転して死体をすぐに埋めてしまったので、いまとなっては調べようもない。
カンクロウはあっさり回復し、その後いちども病気せず、元気に暮らしている。
事故死したあの子ネコがカンクロウを助けたのだ。
写真もなく、ただボクの記憶の中だけにうっすらと残るあの子ネコが。
ボクはそう信じている。
感激したニャ〜!
この店主から本買って良かったにゃ〜!